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【新規開業】法人設立する際の留意点

2024.07.16

放課後等デイサービスを開設する場合、初めにやることは「法人の設立」であると前回のコラムでお伝えしました。その理由は「放課後等デイサービスは法人でないと指定を受けることができないため。」でしたね。

でも一口に法人といっても「株式会社と合同会社のどっちが良いか?それとも一般社団法人?」など、迷うこともありますよね。そんな貴方にこのコラムではそれぞれの法人種別の特徴やメリット、デメリットを解説します。これから新規に法人をつくる方だけでなく、既にある法人で事業を開始する予定の方向けの注意点もありますので、ぜひご覧ください。

【株式会社、合同会社、一般社団法人の3択】

まず、法人には大きく分けて「営利法人」と「非営利法人」があります。

営利法人とは「主に経済的利益を得るのが目的である法人」で、事業によって余剰利益が生じた場合は株主などに分配することができます。

非営利法人とは「主に経済的利益を得るのが目的ではない法人」であり、営利法人との違いは余剰利益が生じても、構成員に分配ができないということです。

児童福祉事業なのだから、お金儲けを目的としない「非営利法人」の方が良いのではないか?と思われる方もいるかもしれません。それは事実その通りです。NPO法人などの方が世間からの見え方は良いですよね。

ただし後述する理由により、放課後等デイサービスを開業するほとんどの方は「株式会社、合同会社、一般社団法人」のいずれかを設立することになるのです。

【有限責任か?無限責任か?】

「有限責任」とは、会社が倒産したときなどに、株主などは出資したお金以上の責任を負わないということです。一方で「無限責任」とは、会社が倒産したときなどに、会社の代表者などが借金の全額を支払う責任を負うことを意味します。つまり、会社が負債を払いきれない場合、無限責任を負う者は個人の財産を使ってでも弁済をしなければなりません。

無限責任社員が置かれる法人は「合名会社」と「合資会社」です。無限責任のリスクを回避するのであれば、この時点で、これらの法人形態は選択肢から外れるのではないでしょうか。

【設立時の条件は?】

非営利法人の場合、設立時の条件が厳格であることが多く、この点からNPO法人、一般財団法人、社会福祉法人は選択肢から外れます。

例えばNPO法人は、設立に最低でも4か月程度の期間がかかります。また10名以上の社員が必要かつ3名以上の理事と、1名以上の監事も置かなければなりません。他にも事業報告書や決算書を所轄庁に提出したり、

活動内容や財務情報を公開したりといった透明性が求められる法人形態です。

一般財団法人は7名以上の設立メンバーと300万円以上の財産の拠出が必要です。また設立後は2期連続して純資産が300万円を下回ると強制的に解散させられてしまいます。

社会福祉法人の設立難易度はさらに高く、設立には年単位の期間がかかりますし、社会福祉事業を行うための物件や一定の資金を保有していることが求められます。また、6名以上の理事と2名以上の監事の設置を求められます。

反面、一般社団法人は難しい要件がほとんどなく、非営利法人の中では比較的設立しやすい法人形態であると言えます。

【株式会社、合同会社、一般社団法人の比較】

株式会社、合同会社、一般社団法人の比較を行いました。

設立費用は、合同会社や一般社団法人が安価です。設立にかかる期間や資本金の最低額といった設立の難易度はさほど差はありません。大きく異なる点は利益分配の可否と信用力です。

一般社団法人は、前述のように利益が出た場合に出資者等に分配することができませんのでご注意ください。

信用力の面では、合同会社がやや低いとなっていますが、これは合同会社という名称が他と比較してまだメジャーではないという理由です。ただ、放課後等デイサービスの場合、保護者が「合同会社だから」という理由で利用しないなどという事例は聞いたことがありませんので、影響は少ないでしょう。

実はこの3者の比較で最も気にかけなければならないのは、一般社団法人は金融機関からの借り入れの難易度が高いということです。日本政策金融公庫であれば、融資を受けられることもありますが、概ね1,000万円が限度です。それ以上の資金調達を図る場合は、民間の金融機関にも打診をしなければなりませんが、融資が通る可能性は限りなく低いと言ってよいでしょう。

その理由はなぜか?一般社団法人は営利を上げることを目的していない非営利法人であるため、営利法人と比較すると収益性が低くなる傾向があります。金融機関からすると収益性が低く、返済能力の乏しい法人に融資するのはリスクが高いと判断されてしまうのです。

ですから、円滑に融資を受けたいのであれば、株式会社か合同会社を選択しましょう。

【定款の事業目的】

法人設立にあたっては、もう一つの注意点があります。

それは定款の事業目的に「児童福祉法に基づく障害児通所支援事業」と記載しなければならないということです。

定款の事業目的とは、会社が行う事業内容を明確に示したものです。前述の記載がないと、指定権者から放課後等デイサービスの指定をうけることができなくなってしまいます。

既存の法人で事業を行う際も忘れずに、定款の目的変更を行っておきましょう。

以上、法人設立する際の留意点でした。 法人形態によってメリット・デメリットがありますので比較検討いただき、ご自身の希望に最もマッチする法人形態をお選びになってくださいね。定款の事業目的には将来的に行う可能性のある事業を記載しておくこともできますから、「児童福祉法に基づく障害児通所支援事業」以外に何を記載するかもご検討ください。