児童発達支援・放課後等デイサービス ヒトツナ フランチャイズ本部の遠藤です。
この記事では、発達支援のアセスメントで見るポイントについて解説致します。
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児童発達支援・放課後等デイサービスのアセスメント
以前の放課後等デイサービスガイドラインでは、児童の適応行動の尺度をみるVineland-Ⅱ等の標準化されたアセスメントツールを用いる等することで、お子様の個別支援に役立てていくようにと記載されていましたが、令和6年7月のガイドライン改定により、次のように表記されるようになりました。
児童発達支援ガイドライン
2.児童発達支援計画の作成の流れ
(1) こどもと保護者及びその置かれている環境に対するアセスメント
○ 児童発達支援管理責任者は、こどもや家族への面談等により、本人支援の5領域(「健康・生活」、「運動・感覚」、「認知・行動」、「言語・コミュニケーション」、「人間関係・社会性」)の視点等を踏まえたアセスメントを実施する。なお、「障害児通所給付費に係る通所給付決定事務等について」(令和6年4月)において、市町村が、支給決定の際に、介助の必要性や障害の程度の把握のために実施する「5領域 20 項目の調査」の結果について、保護者に対し、利用する事業所等に交付するよう依頼することが望ましい旨示していることから、事業所等は、保護者に対し、「5領域 20 項目の調査」の結果について確認の上、当該結果について、アセスメントを含め実際の支援の場面にも活用していくことが重要である。
○ こどもと保護者及びその置かれている環境を理解するためには、こどもの障害の状態だけでなく、こどもの適応行動の状況を、標準化されたツールを用いたフォーマルなアセスメントや、日々の行動観察なども含むインフォーマルなアセスメントを使用する等により確認する必要がある。また、こどもの発育状況、自己理解、心理的課題、こどもの興味・関心、養育環境、これまで受けてきた支援、現在関わっている関係機関、地域とのつながり、利用に当たっての希望、将来の展望等について必要な情報を集め、こどもと保護者のニーズや課題を分析する必要がある。
5領域20項目の調査
令和6年度の法改正により、児童発達支援・放課後等デイサービスともに本人支援の5領域という視点が設けられ、それらを総合的にアセスメントした上で支援計画を作成していくことが必須となっております。そのため、新しいガイドラインでは、市町村が受給者証の支給決定の際に実施している5領域20項目の調査の結果について、支援の場面に活用していくよう記載されました。
参考:こども家庭庁【別紙1-1】障害児の調査項目(5領域20項目) (cfa.go.jp)
実際ガイドラインの5領域の支援内容だけではアセスメントするのが難しいと感じたり、インフォーマルに偏りやすい状況だったため指標が示されてよかったですね。
標準化されたアセスメントツールの活用
改定前のガイドラインでは、標準化されたアセスメントツールの具体例としてVineland-Ⅱという名称が記載されておりましたが、令和6年7月版のガイドラインからは具体的な名称はなくなっております。ただ、標準化されたアセスメントツールを用いて観察する対象に「こどもの適応行動の状況」と記していることから、それらを定量的・客観的に観察できるツールを検討していくことが望まれることが分かります。実際、Vineland-Ⅱは適応行動評価尺度といい、コミュニケーションや日常生活スキル、社会性、運動スキル、不適応行動の状況を観察するものです。
適応行動評価尺度とは
Vineland-Ⅱでは適応行動を「個人的または社会的充足に必要な日常活動の能力」と定義しています。最低限の生存のためのスキルと、外的な社会により適応し個人の人生を充実させるための能力までを“適応行動”と考えているのです。人として健やかに生きるためには、身体的・精神的・社会的にも満たされた状況(ウェルビーイング)が必要ですが、そのどこかが欠けると、生活全体の質は低下していくと考えられ、適応行動はまさにウェルビーイングを意味していると思います。
なぜ、不適応行動の評価が必要か
個人の人生の充実は、生存・生命が脅かされないことは勿論、参加できるコミュニティ(社会)が多いことや、自分に関わることを自分で選択・決定ができることも、重要な要素です。不適応行動は、参加できる社会や選択肢が狭めたり、不適応行動を示す状況は本人にとっても心身の苦痛を伴っている状況と考えられるため、出来る限り適応行動に変容させていくことが望まれると考えます。ただしすべては、権利の主体(本人)のウェルビーイングを中心に考えられるべきという事です。
だからこそ行動の意味を知ることから
他害、自傷、物壊し、脱衣、様々な問題行動と言われる行為も、そこにはその子の思いや願いがあり、その背景には苦痛や不安、恐怖等の言葉にできないもどかしい気持ちを抱えているということです。また、行動は学習の結果ですので、その行動自体が今までの関わられ方の中で定着した癖になっている可能性も否定できません。「問題を起こす子」と決めつけず、その子の行動の理由をわかろうとすることを絶えず行うことが、支援でありアセスメントそのものだと思います。誰かひとりでも自分をわかってくれた大人がいたという経験は、その子がまっすぐ育っていく上で必ず、支えになるはずです。